第104章

福江お婆さんが本当に怯えているのが見て取れた。彼女は、せっかく手に入れた平穏な生活がこの息子によって壊されるのを恐れていた。

「母さん、樹が結婚することになったんだ。知らせに来たんだよ」福江悟志が言った。

福江お婆さんは少し驚いた様子で「樹が結婚するの?」

「ああ、孫が結婚するんだ!嬉しくないか?彼の結婚式に出たくないか?」

福江お婆さんの目が急に潤んだ。言葉につまりながら何も言えなくなった。孫まで結婚する年になり、自分もほんとうに年を取ったのだと実感した。

だが福江おばあさんは自分の息子をよく知っていた。こんなことだけでわざわざ彼女を訪ねてくるはずがない。「樹の結婚式に連れて行く...

ログインして続きを読む